住宅の設計の仕事は、建築材料を使い、構造技術を駆使し、
設備機器を生活や気候に合わせながらものを設計していますが、
片方では、その家族の人間関係や原風景等ソフトを
デザインしているのではないかと時々考えてしまう事があります。

Tご夫妻は、初めての打ち合せが結婚式一ヶ月前でした。
その後、結婚式をあげられ新婚旅行、新婚生活、出産と
お二人は現実の生活を作り上げてこられました。
ひとつひとつを乗り越えて？いかれるごとに、
お二人の表情が柔和になられていきました。

その時期に、自分たちの住宅を考えることは、
一つのあるべき姿ではないでしょうか。

かつてのヒット曲で小坂明子　作詞/作曲　「あなた」があります。

もしも私が家を建てたなら
小さな家を建てたでしょう
大きな窓と小さなドアと
部屋には古い暖炉があるのよ
真赤なバラと白いパンジー
子犬のよこには　あなた　あなた
あなたがいてほしい
それが私の夢だったのよ
いとしいあなたは今どこに

ブルーのじゅうたん敷きつめて
楽しく笑って暮らすのよ
家の外では坊やが遊び
坊やのよこには　あなた　あなた
あなたがいてほしい
それが二人の望みだったのよ
いとしいあなたは今どこに　　　（一部引用）

ここで、歌おうとしているのは別れた彼に対する感情ですが、
聞き手が共感を覚えるのは、家の中での具体的な生活の情景が、
彼女の思いを感じさせるからではないでしょうか。

もちろん、T邸の場合は、小さなドアもブルーのじゅうたんもありませんが、
生活のシーンを一つ一つ検証しながら組み立てていくお二人の取り組みは、
まさしく自分たちの未来の設計図を作っているように感じました。

住宅は、生活をデザインしています。
住宅は、現在だけでなく、未来を設計しています。