今、人気の高まる「建築家と造る家」。しかしハウスメーカーと違い、相談窓口がどこなのかわからず、誰にローンの相談をすれば良いのか、敷居が高いのではないか、私たちには漠然とそんな不安があった。そんな折、住宅雑誌でＡＳＪのイベント「未来をのぞく住宅展」が近くで催される事を知り、2004年の秋、足を運んでみることにした。

イベントは、数々の建築家がそれぞれのブースでプレゼンを行う形式のものだった。その中の一人、窪江さんにはバチッときた。今までに手がけられた家々の写真は、もちろん素敵だったし、彼の遊び心たっぷりの人柄にも惹かれた。相性のいい人と出会う時はそういうものだと思う。そんな出会いの後、初めて提案されたプランに一目ぼれして即決。彼の提案のプランは「私たち夫婦の家に対する壮大な夢とほとばしる欲望、隣の母屋に住む私の両親の希望、そして夫の両親の将来の同居」を盛り込んだものだった。後々知ることになるのだけれど、窪江さんのプランは「そんな要望をてんこ盛りの家を、限られた土地を最大限に有効活用して」建てるために、工務店泣かせの非常に難しい工程を要求されるものだった（と．．．後で現場監督に聞いた）。ハウスメーカーの設計士からは提案されなかった家なのだと思う。

ＡＳＪの営業担当者は前田さん。彼にも大きな信頼感を持った。いくつかハウスメーカーを訪ねたけれど、契約前に前田さんほど「私たちに耳の痛い話をした」セールスマンはいなかった。そう、先立つものは具体的な資金計画だ。彼は最初の段開から、家造りに必要な費用を丁寧に事細かに説明し、見積書には表札からエアコン代の目安まで明記されているものだった。家造りの夢をみるのは自由だけれど、現実的な資金計画が先にあっての夢。でも契約前にこの現実を説明するのは、とても難しいことだと思う。同時期に新居計画をしていたある友人に聞いたが、契約間近になって、家造りにかかる費用の詳細の説明があり戸惑ったとのこと。

そんな経過をへて正式契約。その日は、窪江さん、前田さん、そして私たち夫婦でワインを乾杯。なんだか盛り上がって、かなり飲んで食べて、そしてさらに盛り上がって本音トークが炸裂。より詳細なプランを詰めながら、窪江さんは「それだけしか予算がなくて、プランにそんなにたくさんの希望を盛り込むなんて無理だし、希望通りのプランは作りませんからね～」と一撃。私たちの方は、酔った勢いで「ワインだって、値段が高いものだけが美味しいわけではないしぃ～。」と攻勢。こんな会話を楽しめたのも、遊び心たくさんの窪江さんならではだと思います。ちなみに、そんな様子を、前田さんはニコニコ（もしかしたらヒヤヒヤ）して眺めていました。こんな風に家造りはスタートした。

現場監督の北野さんとは、２００５年１１月の上棟式ではじめてあった。長期的に良質な家を維持するためのいくつかの家造りの提案をもらった。そして、時に大工さん、時にペンキ屋さん、そして交通量の激しい現場での交通整理、建築家との橋渡しなど、見事な監督さんだった。多岐にわたる人々が携わる家造りを工期内にまとめ上げるのは、現場監督のお人柄にもよるものだと思う。

建設の過程でも、『建築家の窪江さん』、『工務店としての北野さん』そして『営業の前田さん』と、私たちで何度も話し合った。時にはそれぞれの意見が食い違うこともあったが、納得がいくまで話し合って解決できたと思う。私たちは施主とはいうものの、素人の立場で生意気にもプロの方々の提案に自分たちの希望を意見する訳だから、私たちも家造りについて相当な勉強をした「つもり」である。特に凝り性の夫の研究熱はすごかった。自然素材にこだわった彼は、木の特性などについての専門書を熟読し、「○○篤夫の建もの探訪」は欠かさず見た。結果、プロの皆さんから「悪くない案ですね」とか、「センスいいですね」と希望を取り入れてもらえ、ひそかにうれしかった事も。これがまた「家造りの醍醐味」だと思った。

私たちの新居の引渡しは２００６年４月８日。なんと、私たちに生まれた双子の赤ちゃん『洸と楓』の誕生日の翌日だった。出来上がったのは、光と風通しのいい吹き抜けのリビングダイニングを中心にし、家族を間仕切る壁の少ない家。通りに面してそびえ立つような存在感があり、夜に電気が灯ると行灯のように浮かび上がる。木の素材感を生かしつつ、スタイリッシュなイメージに出来上がった。桜の満開の季節に、どこにいても家族の気配のするやさしい家で、私たちの新しい生活がスタートした。

ＡＳＪさんの素晴らしいシステムとスタッフの方々と一緒なら、「建築家との家造りの醍醐味」はよりエキサイティングになると思います。